プードルの家庭の医学
トイプードルの家庭の医学
トイプードルの病気についての解説です。私ではなく、獣医師による解説なので、少々難解かもしれません。
【感染症】
a.イヌブルセラ症
動物からヒトに感染するブルセラ症のうち、イヌブルセラ症は最も軽症とされる。本邦では、1970年頃輸入された繁殖犬によって持ち込まれたと考えられる。病原体はイヌブルセラ菌Brucella canisという細菌である。家庭で飼育されているイヌにおける感染率は明らかではないが、動物愛護センター等に保護されたイヌの調査結果によると数%程度が過去に感染したことを示す抗体を保有している。イヌからイヌへは交尾等によって伝播し、時にイヌの繁殖施設で集団発生がみられる。このような繁殖施設からペットショップを経て保菌犬が購入される可能性がある。家畜由来ブルセラ菌は感染症法に基づく4類感染症であるが、これに感染したことが確認される患者は極めて稀である。中でも、イヌブルセラ症の症状は軽い場合が多く、感染を自覚しない感染者がどのくらいいるのかは不明である。イヌと濃密な接触をすることの多い獣医師に抗体陽性者が散見されるが、この場合も抗体検査によって感染に気付くことがほとんどである。イヌブルセラ菌は、尿、精液、感染犬が流産した場合は流産胎子や汚物に排泄されることが知られている。このため、分娩の介助や死産・流産した胎子を取り扱うことによって感染する可能性がある。原因菌が傷口や粘膜から侵入したり、経口的に侵入することにより感染する。ヒトでの潜伏期間は通常1~3週間で、その後、発熱、発汗、悪寒、倦怠感、頭痛などの風邪様症状を呈することがある。しかしこの菌はヒトに対しては病原性が弱く、発症することは稀である。発症した場合は、他のブルセラ菌感染の場合と同様に、抗生物質を用いた治療が行われる。動物用・ヒト用ともにワクチンはない。イヌの購入にあたっては、死産・流産の発生がなく、生まれた子犬の発育が良好な信頼のおける繁殖所やペットショップを利用するとよい。愛護センター等から入手する場合にはブルセラ感染の心配のない動物であることを確認し、愛護センターも検査体制を確立することが望ましい。飼育にあたっては、健康不良犬との接触を制限する、健康不良犬との接触を避けるために放し飼いを行わない、などが必要である。
b.皮膚糸状菌症(白癬)
皮膚糸状菌は真菌(カビ)の1種で、主に皮膚が障害を受ける。主な感染経路は感染動物との接触であり、典型的な動物由来感染症の1つであるが、ヒトからヒトへの感染も多いため、動物由来感染症としての認識は低い。予防対策を進めるために、飼い主、医師、獣医師はこの疾患が動物由来感染症であることを認識する必要がある。イヌ小胞子菌Microsporum canis、毛瘡菌Trichophyton mentagrophytesなどが原因菌で、本邦では、10種類程度の菌種が問題となる。ペットとしてはイヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類などが感受性の高い種類である。これらの動物では落屑、紅斑、被毛の断裂、脱毛、毛包炎、糜爛などを呈し、肉芽腫に進む場合もある。全国的な感染率調査などは行われていないので、発生状況は不明である。菌が付着していてもまったく症状を現さない場合もあるが、発症動物では、体の各所に落屑、紅斑、被毛の断裂、脱毛、毛包炎、糜爛などを呈し、重篤になると化膿や肉芽腫に進む場合もある。感染症法等による届出対象疾患ではないので、全国的な統計はないが、皮膚科新来患者の13%以上が白癬との報告がある。しかしながら、このうちどの程度が動物由来であるのかは不明である。感染動物の被毛などとの接触により伝播する。感染動物の室内飼育等では、動物との接触の機会が多いことから、飼い主への伝播の可能性も高くなる。排菌量は1歳未満の感染動物で多いことが知られている。ヒトの症状は、頭部白癬(シラクモ;境界が明瞭な落屑や脱毛)、体部白癬(ゼニタムシ;境界が明瞭な紅斑や環状の隆起、小水疱形成など)、ケルスス禿瘡などがある。場合によって爪が侵されたり、重度の毛包炎に至ることもある。動物では、紅斑、脱毛が目立つ。ヒトでは治療は抗真菌剤の外用または内服によって行われる。動物ではまず被毛を刈ったほうが、病原菌が付着する表面積が減るので、治療しやすい。そのうえで、真菌にも効果があるシャンプー剤で、全身を洗浄する。落屑や脱落した被毛には高濃度に真菌胞子が付着しているので、部屋の掃除はとても重要である。本邦では、ヒト用、動物用とも、ワクチンは用いられていない。動物に皮膚病変が現れ、それが徐々に拡大していくときには獣医師の診察を受ける。動物では症状が軽いか無症状であっても、ヒトに感染すると重症化することがある。特に、幼児や高齢者は抵抗力が低い。
c.回虫症
回虫という寄生虫が小腸に寄生する。成虫は10cmくらいの白いミミズのようである。この雌虫が産卵し、外界に出て、虫卵内で幼虫が形成された状態の卵を摂取することで感染する。感染すると消化管内で孵化した幼虫は何と腸管を穿孔し肝臓、肺内を移動し、最終的に痰になって出てきて、そのまままた飲み込まれる。そして、そのままその腸管のなかでやっと大人になれる。ただ、すべての幼虫が成虫になるのではなく、一部は皮下や筋肉内などで潜伏するものもある。特に雌イヌに感染している幼虫は妊娠したときに、胎盤を介して胎子に移行したり、乳腺からミルクを飲み始めた子犬に経口感染することもある。子犬の場合、定期駆虫していない母親からもらっていることが多い。症状はないこともあるが、一般的には下痢を起こす。多数寄生では成長が悪くなったり、腸閉塞を起こしたりすることもある。顕微鏡で虫卵を検出することで診断する。腸管内の成虫が便と一緒に排泄されて分かることもある。回虫を含む消化管内寄生虫の駆除薬を飲ませることで駆虫する。また、フィラリア予防薬に含まれたチュアブル剤や背中の皮膚に滴下して吸収させるタイプのものもある。この回虫はヒトにも感染し、幼虫移行症として、眼、脳、肺に病害を現すことがあり、特に、小児、高齢者がいる家庭では積極的な定期駆虫を勧める。
【眼科疾患】
a.進行性網膜萎縮
網膜という眼の奥の映像を映す膜が進行性に萎縮していく疾患である。初めは暗いところで、ものにぶつかるなどの症状がでてきて、やがては完全に失明してしまう。現在、治療法はみつかっておらず、進行を抑えるために抗酸化剤などのサプリメントを投与するくらいしかない。しかし、盲目でも比較的安定した生活を送ることは可能である。プードルでは遺伝的に多いグループがあり、その血統をひいている場合は、遺伝子検査で判定することができる。
b.白内障
眼の中のピントを合わせるレンズを水晶体というが、これが白く濁っていく疾患である。老齢性疾患であるが、若くても、糖尿病や眼球感染の場合でも見られる。進行を遅くする点眼薬があるが、結果的には水晶体が真っ白になり、視力を失う。しかし、それは曇りガラスによって外が見えなくなるだけなので、それを取り除く手術をすれば、網膜に障害さえなければ、再び視力を取り戻すことができる。
c.水晶体脱臼
正常では、水晶体というレンズは、毛様体という窓枠構造にはまっている。この窓枠からなんらかの原因で外れることを脱臼という。外れて落ち込んだ場所によっては、激しい痛みが出てくることがある。これにより眼圧が上がれば緑内障になり、眼圧を下げる点眼・内服や手術が必要になる。
d.緑内障
眼球の内部は液体が満たされて一定の水圧になるように常に調節されている。緑内障とはこの水圧の調整がうまくいかなくなり、圧力がどんどん上がっていく疾患である。この圧力を眼圧というが、この眼圧上昇(激しい痛みを伴うらしい)により、眼球の奥にある網膜や視神経に障害を受けることが問題となる。専門の眼科検査を行い診断をつけることになる。眼圧降下剤の点眼・内服をしたり、レーザーなどを用いた外科手術を行なったりする。眼圧が下がらず、網膜に不可逆的な障害が生じれば、盲目となってしまう。
e.難治性角膜潰瘍
角膜とは眼球の最も手前にある1mm弱の透明な膜である。潰瘍はいわゆるただれが生じている状態である。角膜潰瘍は外傷で生じることが多く、一般的には細菌感染が起き、眼脂(目やに)が出ている。痛みから流涙、羞明(まぶしそうに目を細めること)がみられる。時間が経過した病変部は結膜から血管が伸びているのがみえる。潰瘍が起きていると染まるフルオレスセイン染色検査を行い、確定診断とする。難治性角膜潰瘍とは、原因が角膜のもともとの構造上の異常からきているために、通常の角膜潰瘍の治療で完治することは難しい。専門家による手術を依頼することになる。
f.涙点形成不全
涙点とは涙を排出する管の入り口である。これは目頭の上下に1つづつ開口している。これがうまくでき上がっていないと、涙の排出がうまくいかず、眼から零れ落ちることになる。涙は常に産生されており、本来はこの涙点から排出されていたのである。眼から零れ落ちることで、いわゆる涙やけを起こす。しかし、涙やけを起こしていること=涙点形成不全というわけではない。涙やけは放置しておくと、被毛の下の皮膚がただれてしまい、なかなか治らない。日頃から、涙を拭くようにする習慣をつけておくとよい。もともと目元を触られるのは、犬の本能としては嫌なはずなので、小さいうちからの習慣づけが望ましい。
g.小丘性睫毛乱生
睫毛はしょうもうと読み、まつげのことである。「まつげ」と書くといつも思い出すことがある。高校古文の時間で、この「つ」は「の」という助詞の古語だということだ。「目の毛」ということになる。乱生とは睫毛の先が角膜のほうへ向いてしまっていることをいう。この睫毛により角膜を常に刺激するので、涙が多く、いつも目の周囲が濡れていることになる。ひどい場合は、角膜炎により潰瘍を起こしたり、慢性的な刺激の継続により、角膜が黒色に着色したような状態になったりする。定期的に異常な睫毛を抜く処置が必要になる。
h.睫毛重生
これは睫毛が正常な位置から生えているものに加えて、異常な位置から生じていることをいう。睫毛乱生と同様に異常な睫毛を抜くことで対処する。
i.眼瞼内反症
眼瞼とはまぶたのことである。内反とは内側、つまり角膜の面に向かっているということである。眼瞼が内反することで、眼瞼縁の皮膚や被毛などが角膜を傷付けやすくなる。軽度であれば、角膜保護剤の点眼で対処できるかもしれないが、外科的に瞼の皮膚を切り取り、瞼の美容整形手術をすることで対処する。
j.視神経低形成
視神経とは眼球の最も奥から脳まで続く神経で、視覚を司っている。これがうまくでき上がっていないとなると、視力は弱いか盲目になっている。
【耳鼻科疾患】
a.外耳炎
トイプードルは耳の中に毛が生える種類である。そのため、何らかの原因でいったん外耳炎が生じると、治りが悪くなることがある。中でも、マラセチアという酵母菌(カビの仲間)は、しつこい。もともと耳の中に生息し、耳の脂分を栄養にして生活している。これが炎症を助長することがある。耳の臭いがきつくなったり、耳の内側が赤くなったりする。耳垢はたいてい赤褐色で、ベトッとしている。これを顕微鏡で観察して、大量にいるようであれば、マラセチア性外耳炎ということになる。病院専用の耳洗浄剤で定期的に洗浄が必要になる。これは病院でインストラクトの上、自宅で行ったほうがいい。なぜなら綿棒でごしごし、これでもかとやってしまうと、余計悪化させてしまうからである。熱心な飼い主さんほど、丁寧に汚れを取り出そうとして、結果的に、意に反して悪化させてしまうことが多い。耳洗浄でもよくならないようなら、専用の殺菌剤を処方してもらうことになる。放置しておけば、確実に悪化し、耳の穴が塞がってしまえば、手術も検討するような事態になりかねない。特にアトピー体質であれば、生涯にわたって、定期的なケアが必要になる。
【循環器疾患】
a.僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁とは心臓の左の上下の2つの部屋を区切る逆流防止装置ストッパーのことで、上から下への一方通行で、血液を流している。この仕組みがうまくいかなくなることを閉鎖不全という。下の部屋を左心室といい、血液を大動脈に送りそれが全身へと循環していく。上の部屋を左心房といい、肺で豊富な酸素をもらった血液を受け入れる。この病気は左心室から左心房へ血液が逆流するために、全身への循環量が減るので卒倒したり、肺からうまく血液が流れずに、肺に水分がにじみ出ていく肺水腫という状態を引き起こす。これにより咳が出るようになる。診察時の聴診で気付かれることが多く、胸部X線写真撮影、心臓超音波断層検査、心電図検査、血液検査で診断していく。基本的には内科治療する疾患であるが、残念ながら完全治癒は望めない。循環の負担を減らすために、血管を拡張させ血圧を下げる薬剤、肺に溜まった水分を減らすための利尿剤、心臓の収縮力が弱っている場合には強心剤などを投与する。
b.イヌ心臓糸状虫症
蚊によって媒介される寄生虫で心臓に寄生する。メス虫は20cm以上になる、大きな寄生虫である。これに寄生されると、心臓や血管の内側が傷つけられるので、たとえ寄生虫を駆除しても、完全治癒には至らない。しかし、予防をすることは比較的簡単であり、フィラリア症予防薬が各社から製品化されているので、獣医師の指示に従い投与すればよい。
c.動脈管開存症(PDA)
胎子の時期に働いていた血管で肺動脈と大動脈をむすんでいたものを動脈管というが、これが生後は退化してなくなっていくはずが、残ってしまったものである。大動脈から全身に流れるはずの血液の一部がまた肺に戻ってしまうため、循環に負担がかかるようになる。進行すると、疲れやすくなったり、咳込むようになる。元気がなく、食欲もなく、やせて、成長が遅い。健康診断時の聴診でみつかることがある。超音波検査器で精査する。治療はこの動脈管を閉じてしまうことである。大学病院での手術になる。放置しておけば手術はできないくらいに悪くなる。雌に起こりやすい。
d.拡張型心筋症
心臓は筋肉で構成され、一生涯収縮拡張を一定周期で繰り返す強靭なポンプである。この筋肉の厚みが薄くなり、内腔が広がった状態になり、しかし、筋力がないために、その内腔にたまった血液をうまく押し出せなくなっていく。症状の進行に伴い、咳、呼吸困難、不整脈による元気消失、場合によっては突然死となることもある。胸部X線撮影、心電図検査などを行うが、超音波断層検査が有用である。この病気は残念ながら治療で治るものではなく、継続した対症療法が必要である。雄のほうが2倍発生が多い。
【呼吸器科疾患】
a.気管虚脱
気管とは肺まで空気を送る管である。この管は掃除機や洗濯機のホースのような構造になっており、つまり、リング状の軟骨に膜がかぶせてあるようなものである。この管がつぶれてしまう病気が気管虚脱である。一般的に小型犬に多く発生する。症状は呼吸困難で、よくガチョウの鳴くような声とたとえられるが、最近はガチョウの鳴き声が分かるかたも少ない。とても苦しそうに呼吸をする。胸部X線撮影で診断することになる。内科的な治療は呼吸をしやすくさせる薬の投与である。しかし、これで気管が元に戻ることはない。手術により気管の壁を支えるような器材を入れて、呼吸がしやすいようにすることも可能であるが、長期の予後は一定しないようだ。吠えることは気管虚脱を助長させてしまうことが考えられるので、いわゆる無駄吠えをさせないことは大切な予防となる。首輪をしてグイグイ引っ張る癖も悪化の要因となろう。タバコの煙も弊害がある。飼い主として予防できることはやってあげよう。
【皮膚科疾患】
a.マラセチア性皮膚炎
マラセチアは外耳炎もよく起こす酵母の仲間のカビである。季節性のことが多く、気温湿度の高いときに増える。口の周囲、指趾の間、肛門周囲が赤くなり、腫れることもある。痒みも伴う。基本的にはこのマラセチアを殺菌すればよい。消毒剤の入ったシャンプー、抗真菌剤を含有したクリームの塗布、抗真菌剤の内服薬などで治療する。このマラセチアは健康なイヌにも存在しているもので、全滅させることはできず、再発は多い。アトピーなどの基礎疾患をもっている個体ではなおさらである。
b.狂犬病ワクチン関連性血管炎および脱毛
注射後、3-6カ月後に注射部位に脱毛が見られる。
c.季節性体幹脱毛(正式名称ではない;seasonal flank apopecia)
春と秋に多い。ミニチュアプードルで発生しやすい。
d.先天性貧毛症
誕生時あるいは1カ月齢でみられる。
e.淡色被毛脱毛症(正式名称はない;color-dilution alopecia:CDA)
被毛色を決定する遺伝子が関係しているといわれている。被毛色の淡い部分が脱毛していく。スタンダードプードルで発生しやすい。
f.注射後限局性石灰沈着症
注射後5カ月以内にその部位が硬くしこりができる。この部分が破れて灰白色の内容物がでてくることがある。その部位を手術で切除すれば治る。プードルではプレドニゾロンのようなグルココルチコイドを皮下注射すると、その部位に脱毛が起きることがある。
g.原発性リンパ浮腫
たいていは12週齢までに起こる。リンパ液の循環障害により、むくみが現れる。
h.黒色被毛症(正式名称ではない;melanotrichia)
深部の炎症が治癒した後に黒い色の被毛が生えてくる。
i.鼻部色素消失症(正式名称ではない;nasal depigmentation)
j.肛門嚢疾患
細菌・マラセチア感染、閉塞により炎症を起こし、肛門嚢に異常な分泌物が貯留する。通常は水様な褐色の液体だが、これが異常をきたすと、濃縮してクリーム状になっていく。患部が気になるのか、お尻を摺って歩くようになることが多い。ひどい場合は、肛門嚢の外側の皮膚が薄くなり破れてしまう。
k.肉芽腫性皮脂腺炎
スタンダードプードルでは常染色体性劣性遺伝である。皮脂を産生する分泌線に炎症がおきるために、被毛が薄くなり、褐色のベタベタしたフケがたくさんでてくるようになる。完治できる皮膚病ではないために、一生涯スキンケアが必要である。シャンプー療法を中心とした対症療法を行う。細菌やマラセチアに感染しやすくなるので、抗生物質や抗真菌剤もよく使う。免疫が関係していると考えられているので、免疫抑制剤を使用することもある。
l.特発性慢性潰瘍性眼瞼炎
特発性というのは「しっかりした原因が不明な」という意味である。眼瞼とはまぶたのことである。眼瞼炎は一般的には細菌感染によって起こることが多く、抗生物質の点眼で治ることが多いが、この病気は簡単には治らないということだろう。いままでにこの症例にお目にかかったことがない。
m.特発性無菌性結節性脂肪織炎
脂肪が炎症を起こし、ボコボコとしてくる病気だと思われるが、診たことがない。雌に発生しやすい。
n.アトピー性皮膚炎
アトピーは原因となる物質(抗原という)、たとえば花粉、カビ、チリダニなどに過敏に反応してしまう皮膚炎である。一般にそれらの抗原を吸入したり、皮膚から吸収したりして、体内に入ってくることにより、反応してしまう。いったん発症したら、治らないと考えたほうがよい。治療により抑えるという感じの病気である。予防としてできることは、花粉、カビ、ダニの少ない環境を用意すること。散歩場所、時期を再考する。空気清浄機を導入する。エアコンを性能のいいものに買い換える。拭き掃除をこまめにする。シャンプーをして、体についた抗原物質を洗い流すことも重要。しかし、毛量によっては、たいへんな重労働である。また、皮膚バリアを正常化するために、脂肪酸などの各種サプリメント、保湿剤スプレーも動員してみることも大切。弱った皮膚上では、細菌やカビが大繁殖してくるので、抗生物質や抗真菌剤(カビの殺菌剤)も重要。
【内分泌疾患】
a.副腎皮質機能亢進症
クッシング症候群ともいう。これは副腎という腎臓の近くにある小さな臓器から分泌される、コルチゾールという物質の濃度が増加してしまう疾患である。このコルチゾールは様々な作用を有しており、そのためその過剰症状も多様である。一般的には、脱毛、腹部膨満、多飲多尿が目立つ症状である。プードルでは脳の腹側にある下垂体というところから副腎皮質を刺激するホルモン分泌が増加していることが多く、頭部のMRI検査で下垂体の腫瘍が見つかることがある。外科的に副腎を摘出したり、内服剤でホルモン濃度を調節したりする治療方法があるが、投薬には高価な薬剤を用い、その効果判定のために定期的な血液検査が必要で、飼い主の経済的負担は大きい。
b.成長ホルモン反応性皮膚症
トイプードルとミニチュアプードルでみられる。症状は1~5歳でみられる。
c.甲状腺機能低下症
d.糖尿病
雌に多い。
【整形外科疾患】
a.膝蓋骨脱臼
膝のお皿が外れる疾患である。
b.大腿骨頭無菌性壊死(レッグカルベペルテス病)
c.先天性肩関節脱臼
【消化器科疾患】
a.唾液腺嚢胞
b.輪状咽頭アカラジア
離乳後しばらくで症状が出る。
c.出血性胃腸炎
d.胆石症
雌に多い。
【歯科疾患】
a.乳歯遺残
犬もヒト同様新生子ではまだ歯は生えていない。これがしばらくしてくると、小さな歯が生えてくる。やがて尖った犬歯が生えてくる。半年齢くらいまでに、これらの乳歯が生えそろったところへ、永久歯が生えてきているはずである。乳歯に比べ、永久歯は少し太い感じに見える。このとき、乳歯が抜けておらず、永久歯といっしょに生えている状態が乳歯遺残である。特に遺残が多いのは犬歯と切歯である。乳歯がいつまでも残っていることで、永久歯の生える方向が異常になることが問題を起こす。永久歯の歯並びが悪くなることで、将来的には歯周病が早く始まるであろう。できれば、不妊手術のときに、抜歯を考えてもらうのが望ましい。できるだけスムーズに生え変わるのには、ロープなどの玩具で適度に遊んでやるとよい。
b.不正咬合
咬合とはかみあわせのことで、正常ではない咬合をこう呼ぶ。上顎が下顎より長い、いわゆる出っ歯のことをオーバーバイト(オーバーショット)といい、その逆、いわゆる受け口のことをアンダーバイト(アンダーショット)という。異常な場所に歯があたることで、口腔内を傷つける場合は、歯を削って高さを調節したり、抜歯したりすることもある。
c.歯周病
歯周病とはこれまで歯槽膿漏といっていたものとほぼ同じ意味である。歯茎を歯肉という。歯は歯槽骨と呼ばれる骨に埋まっているが、その周囲を歯周組織という。この歯肉と歯周の問題を歯周病と総称する。たいていは口腔内に棲息する細菌が食物残渣を栄養にして増殖することで問題を起こす。歯の表面に歯垢(プラーク)が付着し、これが時間経過で石灰化して石のように硬くなっていくと歯石と呼ばれる。この歯石は茶色で、唇をめくってみるとすぐに分かる。たくさん歯石がつきやすいのは、上顎臼歯である。歯周病が進行すると、口臭、よだれ、口の痛みを訴えるようになる。さらに悪化が進むと、歯槽骨が融解し、歯が脱落する。また、歯根部に膿がたまり、融けた骨を通してその上の皮膚にまで及び、皮膚から膿が流れ出るようになる。歯周病の予防には定期的なブラッシングが最も効果的である。子犬のうちからブラッシングを習慣とするとよい。また、よだれは歯の表面の歯垢を流してくれる効果があるので、ロープなどの咬む玩具を与えたり、綱引きなどの遊びを取り入れたりするとよい。但し、硬い玩具や蹄などの硬いおやつは、歯が欠けてしまう原因になるので絶対に使わないでほしい。売っているのでついつい買ってしまいそうになるが、我慢してほしい。
【血液・免疫学的疾患】
a.免疫介在性溶血性貧血
b.免疫介在性血小板減少症
雌に多い。
c.大球性赤血球症
生理的なもので治療の必要はない。
d.フォン・ウィルブランド病
常染色体劣性遺伝。
e.全身性紅斑性狼瘡
【筋・骨格系疾患】
a.鼠径ヘルニア
b.陰嚢ヘルニア
c.会陰ヘルニア
【腫瘍科疾患】
a.皮脂腺腫瘍
b.リンパ肉腫
c.角膜輪部黒色腫
d.口腔黒色腫
雄に多い。
【神経科疾患】
a.内耳炎続発性鼓室疾患
外耳炎が慢性化して、内耳炎まで進行する。
b.椎間板疾患
c.リソソーム貯蔵病
d.水頭症
e.低血糖症による痙攣
f.環軸亜脱臼
g.肉芽腫性髄膜脳炎
【泌尿器科疾患】
a.異所性尿管
【生殖器系疾患】
a.雄性仮性半陰陽
b.潜在精巣(陰睾)
常染色体性劣性遺伝。




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